2004年03月16日

偶然からモノを見つけだす能力―「セレンディピティ」の活かし方このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・偶然からモノを見つけだす能力―「セレンディピティ」の活かし方
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■セレンディピティ

Gooの英和辞書で検索してみると、

・Serendipity
http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=serendipity&kind=ej
ser・en・dip・i・ty
━━ n. 思わぬ発見をする特異な才能.
三省堂提供「EXCEED 英和辞典」

という説明がでてきた。れっきとした英単語として存在するセレンディピティ。この本では「当てにしていないものを偶然にうまく発見する才能」「偶察力」などと紹介される。流行語のイメージがあるが、語源は古く18世紀に遡る言葉で、スリランカの寓話「セレンディップと3人の王子」に由来するとのこと。

ニュートン、アルキメデス、メンデル、ジュール、アインシュタイン.......。歴史上の発見が偶然の産物だったという逸話はよく聞くし、近年では、ノーベル賞受賞の報がある度に受賞者や評論家がセレンディピティを口にする。

・「ノーベル賞への道 白川英樹さん 高山から世界へ」
セレンディピティー 目的外の偶然見逃さず
http://www.jic-gifu.or.jp/np/newspaper/kikaku/nobe/nobe2.htm

■偽のセレンディピティ、本物のセレンディピティ

セレンディピティは能力であると定義されている。能力であるならば意図的に磨くことができるし、この本の後半は、感動や観察、ファイリングや記録、行動範囲の拡大、連想などをテーマに、その能力を育てるアイデアが紹介される。

一読して思ったのは、世の中には本物と偽者のセレンディピティが存在し、厳密に切り出して考えるには、ふたつを区別しておく必要があるのではないかということ。

・社会心理的に生み出される偽のセレンディピティ

大きな成功を収めた場合に、特に日本社会は、偶然や他者との出会いに起因することにして、その成功を説明した方が、社会的に受容されやすい。話題としても物語性があるので、メディアが取り上げ、話が伝播しやすい。

つまり、意図的にせよ、無意識にせよ、成功を物語化するプロセスで、セレンディピティを発見、作成、拡大してしまっている可能性を感じる。これもセレンディピティに含めても広義では問題はないが、育てる能力として見るならば、偽者として排除しておくべき例だと考える。

本物のセレンディピティは、私は次のようなものではないかと考えている。

・性格や行動特性、ツキとアウェアネス情報によるセレンディピティ

偶然の発見が高確率で発生するにはふたつの条件が必要なのではないかと思う。ひとつは経験の豊富さであり、もうひとつは経験から意味を見出す能力である。この2要素の積を常時高い値に保つ能力がセレンディピティなのではないか。(この本も要旨はそのような方向性で語られていた。)

ツキを科学する経営本が最近売れているようだ。これらの本もセレンディピティの能力を高めることと同義のような気がしている。ポジティブシンキングというのは、状況を肯定し気分による機会損失を最小にすることにあるのだとしたら経験の豊富さの技術である。

・斎藤一人のツキを呼ぶ言葉―日本一の大金持ち!
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492041834/daiya0b-22/
・オレと100冊の成功本
http://blog.zikokeihatu.com/
ツキと成功、経営などのテーマを語らせたら日本一のサイト

社会関係の技術としては、以前に紹介したアウェアネス情報による機会拡大が有効なのではないか。自分の関心や行動を他者の目に触れるようにしておくことで、予期せぬ展開の確立が高まる。

強い関心を持ち続けることで、状況から意味を見出すことが多くなるということも重要な要素だと思う。脳は無意識のうちに情報処理を行っている。脳は、雑踏の中で呼ばれた自分の名前を認識するカクテルパーティ効果のように、関心のあるテーマには認知レベルで敏感に反応することができる。

■パラダイムシフトか通常科学か

この本のコラムには、セレンディピティの反対語も紹介されている。

Japanity セレンディピティの反対語。「誰もがやっていることを追いかけて、必然のところで発見する能力」

海外の学者が日本人研究者を揶揄した言葉らしいが、「パラダイム」を発明したトーマスクーンの科学論でいうなら、Japanityは「通常科学」の技術である。これはこれで重要で、パラダイムシフトを起こすような「イノベーション」ばかりでは科学もビジネスも動かないと考えられる。むしろ、セレンディピティで語られるような成功の土台はJapanityによって築かれているようにも感じる。

人間の機会の増大や人脈拡大に役立つインターネットはセレンディピティ技術だと言えると思う。今話題のOrkutなどのソーシャルネットワーキングは、まさにその先端なのではないだろうか。

ソーシャルネットワーキングについては、PC雑誌の来月号に特集を書いたので,発売されたらお知らせしますので、これまたよろしくお願いします、とセレンディピティを期待した宣伝で本日のコラム終了。

・果報は寝て待て〜セレンディピティのすすめ
http://www.toyama-cmt.ac.jp/~kanagawa/essay/serendipity.html
深い考察。


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Posted by daiya at 2004年03月16日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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Comments

>・オレと100冊の成功本
>ツキと成功、経営などのテーマを語らせたら日本一のサイト

ご紹介いただきありがとうございます。
まさに、ついてる!

しかし、日本一はちょっと……
けど、それもついてる。

いつの間にか経営も日本一になってる。
ついてる!

本当にありがとうございました。

Posted by: 聖幸 at 2004年03月18日 00:03

橋本さん、昔の記事なのに、読んでとてもラッキーな気分になりました。まさにセレンディピティです。ありがとうございます。

関連記事を書いたので、よろしかったらご覧下さい。

しあわせのくつ『ツキ(セレンディピティ)の見つけ方』
http://d.hatena.ne.jp/wanwangorogoro/20060706

Posted by: wanwangorogoro at 2006年07月06日 23:38