2005年03月13日

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・模倣される日本―映画、アニメから料理、ファッションまで
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■文化の日本、経済のフランス、GNPからGNCへ

フランスでは「文化の日本、経済のフランス」という論調がある。フランス人の経営者が日産を建て直したことに象徴される経済のフランス。逆に日本のアニメや若者文化がフランスで大流行しているという意味での文化の日本。日本経済の低迷が続く中で、宮崎アニメや北野武は世界的に認められたりして、この図式が一層鮮やかになっているらしい。

この本の冒頭でフランスのジャーナリストが2002年に書いたJapan's Gross National Coolという論文は当時、日本でも一部で話題になった。

・Foreign Policy -- Japan's Gross National Cool, By Douglas McGray
http://www.chass.utoronto.ca/~ikalmar/illustex/japfpmcgray.htm

国力をGNPやGDPという経済指標はなく、文化のかっこよさ(Gross National Cool)という概念で表したら、日本は世界第一級だという内容。日本はクールな国になったのだ。

だが日本経済の中心ではその自覚はない。

フランスで一番有名な日本人は鳥山明であるという。ところが日本の財界人は鳥山明を誰なのか知らないと著者は問題提起をしている。これからの日本はコンテンツ産業だと掛け声をかける人でさえ、日本のアニメや漫画を見ていなかったりする。国際的な賞を取るレベルになって、半信半疑で逆輸入、再評価をしている。

そして、慌てて「コンテンツに萌えた」企業や官公庁のオジサンたちは、クールなコンテンツはどこで幾らで買えるのか、どうやると工場を作って量産できるのか、と見当違いな方向に向かうように思える。

■コンテンツ、クール、クリエイティビティ、中心と周縁

昨年、野村総研が発表したこのレポートはかなり話題になった。

・マニア消費者層はアニメ・コミックなど主要5分野で2,900億円市場
 〜「オタク層」の市場規模推計と実態に関する調査〜
http://www.nri.co.jp/news/2004/040824.html
野村総研がオタク市場の規模を調査。もはやニッチとはいえないと結論。

オタクというとらえどころのない市場を、オトナ語で説明してくれた。だが、こういう数字や説明でもやはりとらえどころがない。何がクールなコンテンツなのか、どうすれば作れるのかは、市場統計からはわからない。

クールとコンテンツの頭文字であるCは、すなわちクリエイティビティのCでもあると私は考える。クリエイティビティというのは新しい価値を生む源泉だろう。クリエイティビティの火花は周縁でしか発生しない。周縁は「外」や「異」と直接触れているからこそ、その摩擦で火種が起きるのだと思う。

一方、”中心”の人たちは「オタク」「ハッカー」「クリエイター」という”周縁”のことが分からない。火種を燃え上がらせ、経済的価値に変換するハリウッドやディズニーのような動力機関が、まだ日本では確立されていないのだと思う。それが難しいのは、中心にクリエイティビティが不足しているからだろう。

クリエイティビティというのは、泣いたり、笑ったり、怒ったり、困ったり、死ぬほど考えたりという体験から生じる「ルサンチマン」の堆積がいっぱい必要なのだと思う。そういう肥沃な土壌があるからこそ、美しい花が咲くのだと思う。現在の日本の「中心」は、ルサンチマンよりビジネスマンであり、営業マンだから、何がクールか自分では分からないのだ。

■日本が真似された事例のオンパレード

この本には何百もの日本のコンテンツの海外の模倣事例が示される。

ハリウッドの代表作のイメージがある「スターウォーズ」でさえ日本の大きな影響を受けていることを知った。その部分の引用。


映画に登場する「ジェダイ」という言葉は、「時代劇」という言葉の響きからとったものであり、「オビ=ワン=ケノービ」も「一番の帯」という意味で「オビ=ワン」となり、黒帯が訛って「ケノービ」となった。「オビ=ワン=ケノービ」は「一番の帯は黒帯」という意味なのである。レイア姫は卑弥呼のような髪型と衣装をして、ダース・ベイダーは甲冑のようなヘルメットをかぶり、正義の味方たちは柔道着のようなものを着ている。

そもそもスターウォーズはクロサワ作品の「隠し砦の三悪人」のストーリーを借用したもので、オビ=ワン=ケノービ役は当初、三船敏郎が打診を受けて断った経緯があったそうだ。

映画、音楽、料理、ファッションなど、次々にあれも日本の真似であるという指摘が続く。こじつけも少し感じるのだけれど、日本は真似するだけではなく、それ以上に真似される国になったのだなということが分かる。

この本で著者は、文化は誰もが持っていて奪えないものであり、歴史のある日本は文化資源大国であることを自覚せよ。真似されるようなオリジナルを作り出す文化戦略こそ最強のマーケティング戦略であると訴えている。

日本は良くも悪くも「異質」だと内外から言われてきた。その異質さにチャンスがあるのかもしれないとこの本を読んで感じた。


ところで、日本映画のリメイクとして私が今注目しているのは、この夏公開予定のこの作品。日本版は私は極めて高評価なのだが、果たしてリメイクされて、どうなっているのだろうか。公開日に見に行きたい。

・仄暗い水の底から

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主演の黒木瞳が、母性の暗黒面へ引き込まれていく悲しい母親を演じた。

・Dark Water
http://touchstone.movies.go.com/main.html?dlink=darkwater
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ジェニファー・コネリーが主演するらしい。


関連書評:

・宮崎アニメの暗号
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002119.html

・<美少女>の現代史――「萌え」とキャラクター
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001957.html


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Posted by daiya at 2005年03月13日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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Comments

Gross National Cool --- GNCって指標は面白いですね。

以前に、GNH --- Gross National Happiness という指標を読んだことがあります。
ブータンが国家目標にした指標とのことですが、某雑誌では、日本の都道府県を幸福度と観点で、ランキングしていました。

本題から離れてしまってすいません。


Posted by: Lenny at 2005年03月14日 19:06