2005年03月01日

未来ビジネスを読む 10年後を知るための知的技術このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサード リンク

・未来ビジネスを読む 10年後を知るための知的技術
4334933505.09.MZZZZZZZ.jpg

■未来学の必要性

1890年のシカゴ世界博覧会で当時の頭脳100人がアメリカの100年後を予想したそうだ。著者はこの年を未来学元年とし、当時の予測のリストを紹介している。

「アメリカ人の平均寿命は150歳まで延びている」
「社会は豊かになり、男女平等の社会が実現できている」
「税金も不要なほど、経済が発展している」
「人類は自由に空を飛ぶようになっている」
「各家庭にはテレフォーテという装置が備わり、居ながらにして世界のどことでも話ができ、世界中の娯楽が楽しめる」

などなど。

外れたものもあるが、当たったものや、それ以上を実現してしまった項目もある。

著者は、日本は技術の予測はうまいが、未来を科学的に分析することが下手で、それが「失われた10年」で日米の差を広げたとし、日本にも未来学が必要だと提案している。この本は米国の未来学の歴史を辿りながら、未来学の歴史、未来予測の手法、これから有望な未来ビジネスについて論じる。

面白い。

■米国の未来研究の歴史と最前線

アルビン・トフラー(巻末に著者との対談が収録)、ハーマン・カーン、H.G.ウエルズ、アーサー・C・クラーク、エジソン、ピエール・ワッツ、ドラッカー、ピーター・シュオルツなど各分野の未来研究者たちの予測や手法がたくさん紹介されている。

個人的に目を引いたのが、ウィリス・ハーマンという研究者。ウィリスはノエティックサイエンス研究所という、意識革命を説く、精神系のちょっと怪しいシンクタンクの所長だが、「アメリカ人が願ってもなかなか得られなくなるもの」として5つを挙げた。

1 時間 Time
2 他人から認めてもらうこと Recognition
3 賢明な選択に必要な情報 Intelligence
4 影響力 Influence
5 地位や環境の安定 Stability

まさに現代において人々が求めているもののリストだという気がする。これらの欠乏と欲求に国境はないから、普遍的な対策を立てることができるとウィリスは結論している。

ネット社会でもこれら5つは強く求められているものだと感じる。人々がこれらを求め続けるとしたら、どのような変化が起きるのか、どのような対策を立てうるのか、という視点はネットの未来予測にも使えそうに思った。

なお、この本に登場する主な未来予測組織は以下の通り。

・RAND Corporation
http://rand.org/
ヒューチャーズ・グループ

・The Arlington Institute
http://www.arlingtoninstitute.org/

・GBN Global Business Network
http://www.gbn.com/

・The DaVinci Institute - Home Page
http://www.davinciinstitute.com/

・World Trends Research
http://www.worldtrendsresearch.com/

・World Future Society
http://www.wfs.org/

■ヒューチャリストの3大条件

米国の世界未来学会が選んだ未来研究者ベスト17人を観察したところ、次の3つの共通点が浮かび上がったそうだ。著者はこれを「独特のレーダー」と呼んでいる。「先見の明」の内容ということでもあるだろう。

第1条件 科学や技術の最先端の動きに最新の注意を払うこと
第2条件 多くの人のパーセプション(認識)を変えるような出来事を敏感に察知すること
第3条件 まだメジャーになっていないが、インパクトを起こしそうな発想や常識とは違う意見にできるだけ早く注目すること

こうしたレーダーを持つ人たちを集めて、科学的手法で未来を予測すべきだというのがこの本の提唱する未来学といえる。

ここではニューヨーク州教育局が実施した未来予測の手順と各段階の手法が解説されていて参考になった。ひとりひとりの専門知を活かしつつ識者集団の全体予想を抽出する科学的なステップ。

・ブレーンストーミング法
・デルファイ法
・未来の輪
・クロス・インパクト・マトリックス

そして、最終的に予測シナリオが作成される。ここでは「エボリューション」「レボリューション」「サイクルモデル」「勝者と敗者」「挑戦と応戦」などのシナリオモデルがあるとされている。

とても具体的に未来予測の手法を概観していて、未来予測プロジェクトを実際にやってみたくなる。

さて、この本のタイトルである未来ビジネスについては終盤で2章が割かれている。ナノ
バイオ、量子コンピュータなど、日経サイエンスやニュートンの読者ならば、よく知っている種類の先端科学シーズが多いが、二つほど、面白いテーマをみつけた。

・ウォータービジネス
今世紀半ばに世界人口は93億人で70億人が水不足に直面する。

・短時間睡眠で長寿と健康を保つ研究
眠らず、ある種のカロリー不足を続けることが長寿の秘訣であるという可能性

何か、ある、かもしれない。投資する勇気はないが(笑)。


ところでこの本に出ていたのではないのだが、好きな言葉がある。

「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことだ 」(アラン・ケイ)

究極のフューチャリストは未来をつくる人のことだろう。


・二十年後―くらしの未来図
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001260.html

・歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000778.html

・科学の最前線で研究者は何を見ているのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002042.html

・ビジネスチャンス発見の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001151.html

・22世紀から回顧する21世紀全史
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000419.html


スポンサード リンク

Posted by daiya at 2005年03月01日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
Daiya Hashimoto. Get yours at bighugelabs.com/flickr
Comments
Post a comment









Remember personal info?