2003年11月17日

バルマー講演で気になったことを調べてみたらMyLifeBitsこのエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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今日はマイクロソフト社CEOのスティーブ・バルマー氏が、早稲田大学大隈講堂で講演を行ったので聞きに行った。内容はマスメディアで報じられているので、ここでは個人的に気になった部分を話したい。

【バルマーだらけになったITニュースサイト】
・MicrosoftのバルマーCEOが早稲田大学で講演
〜セキュリティ分野の人材育成で提携
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1117/ms.htm
・スティーブ・バルマー、「これからも思いがけないことが起こる」
http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000047623,20062040,00.htm
・米マイクロソフトCEOスティーブ・バルマーが早稲田大学で講演!
http://ascii24.com/news/i/topi/article/2003/11/17/646920-000.html
・マイクロソフトが早稲田と“提携”、セキュリティ分野の人材を育成
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20031117/136536/
・MSバルマーCEO、早大で「コンピュータが実現する10年後はエキサイティングだ」
http://www.zdnet.co.jp/enterprise/0311/17/epn12.html

これからの10年のITのビジョンを、バルマーは腕を振り上げたり、歩き回ったりの、力強い身振りで語った(関係者曰く、今日は控えめで普段はもっとジェスチャーが激しいらしい)。重要な技術として「XML/Webサービス」「セキュリティ/TrustWorthyComputing」「情報主体のソフトウェア」などが強調される。

20年後の世界に本はない。すべてが電子化されている」と断言してみたり、「将来1億台のPCが世界で使われるという話に私とビルは「ありえない」と笑ったけど今はそれ以上だ」とおどけたり、表情豊かなプレゼンで、聞き取りやすい英語に翻訳機を外している学生の方が多かったように見えた。MS社の新しい戦略について聞けたわけではないのだけれど、バルマーの人柄がわかって満足できる講演だった。(頭よさそう。当たり前か。)。

プレゼンの中で、「ある教授が生活のすべてをキャプチャーして研究している」話が出てきた。とてもそのくだりが気になったので帰宅後に調べてみた。

ここからが今日のコラム。

おそらくバルマーが話していたのはこの研究のことである。

・Living with a Lifetime Store(生涯記録装置のある生活)
http://research.microsoft.com/~jgemmell/pubs/UEM2003.pdf

The MyLifeBits systemは、デジタル化可能で価値のある個人の生活をすべて記録するシステムだ。1945年にVannevar Bushが提唱した伝説の情報端末Memexを参考に、現代のテクノロジーを応用して設計されている。ユーザは、24時間、身につけたビデオカメラや音声レコーダーや各種センサーによって、生活のすべてを記録される。

この論文では、まず最新の一般ユーザは80ギガバイト程度のハードディスクを持っている仮定して、おおよその人間の生活の情報量をハードディスク上に記録するとどれくらい入るかを見積もっている。

・100電子メールメッセージ/1日 (5KB/1通)
・100webページ/1日 (50KB/1ページ)
・5ページのスキャンされた紙 (100KB/1ページ)
・1冊の本/10日 (1MB/1冊)
・10枚の写真/1日 (400KB/1枚)
・8時間の音声記録/1日(8KB/秒) 電話や会議内容含む
・1枚の新譜CD/10日(45分、128KB/秒)

この調子で、記録を続けると約5年分で80ギガバイトになるそうだ。もしもギガの上の単位で業務用記録装置として使われる「テラ」バイト級ディスクを使えばさらに60年分が記録できる。一生の記録を残すことが可能になってきているということだ。

驚くのは、ここまでは、今の技術で既に可能ということだ。やろうと思えば一般人でも普通のPCと、電気街に行ってセンサー類を加工すれば同様のシステムは構築できる。

逆にユーザが1テラバイトのディスクを持っているとしてこれを1年で埋め尽くすにはどのくらいの情報を記録できるだろうか。それを計算したのが次の表だ。

1データのサイズ1テラバイトに収納可能な上限1日あたりの記録数
写真 (400KB)270万枚7354枚
文書(1MB)100万文書2872文書
音声(128Kb/秒)18600時間51時間
ビデオ(256Kb/秒)9300時間26時間
高画質ビデオ(1.5M/秒)290時間4時間

そう遠くない将来現れるはずの100テラバイトのストレージがあれば、100年分、つまり生涯の情報をすべて記録できる。人間が亡くなる前に人生が「走馬灯のように」再現されるというが、文字通り、人生の記録を早戻しで眺めることが可能になる。

読んだ本、聞いた話、話したこと、行った場所の風景、出会った人の顔、すべてが記録される。ヒトの記憶にはないことも、記録には残る。身体に運動や体温センサーをつけていれば身体の中の動きまでもが保存しておくことが出来てしまう。

すべてのデータは映像解析、音声認識や顔認識、テキストの意味解析などの判断技術により意味を付与される。そして、Logical Data Structure(LDS)という形式で、関連付けられる。「写真の中のAさん」「IT戦略会議のキャプチャー映像」「Bという本に含まれていたページ」といった具合にメタデータのデータベースが構築されるのだ。そして、それらのデータはクラスタリング処理されて、類似関連したデータをすぐに検索して取り出せるようになる。

mylifbits01.JPG

例えば、この10年間の毎年の誕生会に集まったメンバーの、10年分の写真を取り出して、1番良く来てくれた人の電話番号を調べたい、などという、今は手間な事柄も一瞬で調べられたりするわけだ。

研究者グループはThe MyLifeBits systemは検索システムとして、既にパワフルだが、さらに「私の個人秘書」に進化させていこうとしている。人間が情報を理解し、整理するのを支援するエージェントだ。文書の類似性の検索技術や、顔の認識技術が重要なキーになるだろうと結論している。


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Posted by daiya at 2003年11月17日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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Comments

>ここまでは、今の技術で既に可能

HDDの寿命は、1日8時間使った場合で約5年。
睡眠時間を除いて1日16時間HDDを稼動させ続けたとすると、約2年6箇月で容量を使い切る前に寿命が来る計算になる。
矢張りまだまだ未来の技術じゃないでしょうか。
こまめに予備を作成すれば良いのでしょうけど。

Posted by: 神鷲獅子 at 2006年03月21日 15:48