2004年11月10日

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大人のための文章教室
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さすが清水義範。楽しくてためになる文章教室。

清水義範は他の有名作家の文体をコピーして語ることができる、特殊なモノマネ能力で有名な作家。自分の声で語るコラムも軽妙でとても面白い。どうやって変幻自在に文体を操っているのかをこの本で垣間見せてくれた気がする。

■ワープロに乗っ取られるな

プロとアマの書き手の違いはワープロを使ったとき、文章が変わるかどうかだという話が冒頭にある。プロは紙に筆で書いたときと同じになるが、アマは妙に漢字や漢語が増える傾向があるという。

たとえば、ワープロで

ひどい 酷い
おののく 戦く
すさまじい 凄まじい
ものすごい 物凄い

という漢字を使ってしまいやすいし、語の選択も、

ためらう 躊躇する
ふみにじる 蹂躙する
いきどおる 憤慨する

という漢語的表現を使いやすい。

筆で書いた場合、まず「躊躇する」なんて書く気にならないだろうというのだ。ごもっとも。ひらがなの分かりやすい表現が、筆をワープロに乗っ取られることで失われてしまうから気をつけよという指南。

これは実際、文化庁の調査報告にも関連する数字が出ているのを見た。

平成15年度「国語に関する世論調査」の結果について
http://www.bunka.go.jp/1kokugo/15_yoron.html

情報機器の普及による言葉遣いへの影響の項目では、「影響はあると思う」が78.9% で具体的には「漢字が書けなくなる」がトップである。ところが「常用漢字以外の漢字の使用」では積極的に使っていくべきと4割が回答したし、「常用漢字以外の漢字を使う言葉の書き表し方」の項では「愕然」「剥製」「破綻」などの、漢字(及び交ぜ書き)使用の支持者が多いのである。

筆で書けない難しい字を、ついつい使ってしまう人が多くなっているわけだが、書けない字はまだ自分のものになっていないから、文体の味わいとしては使えないということだろう。逆にワープロ時代はひらがなや平易な表現の使い方が効果を発揮するということなのかもしれない。

宮沢賢治だとか谷川俊太郎などの美しい文体を見ていても、平易な文章の力を感じる。

・ThinkQuest入賞作:「銀河鉄道の夜」
http://contest2002.thinkquest.jp/tqj2002/50133/story-top.html

■ですます と だである

「です・ます」「だ・である」どちらで書くべきかは私もこのブログで悩むところ。私は96年から2000年まで、オンラインでは「です・ます」中心で書いていた。だが、ある時期から「です・ます」で意見を語るのは、ある種の”逃げ”姿勢だなと感じて「だ・である」中心に変えた。「だ・である」には覚悟がある。

「です・ます」は上下関係を意識した文体だという指摘はなるほどと思った。著者の経験では学校で生徒に作文させると9割以上が「です・ます」で書いてくるという。逆に偉い先生は敢えて読者に「です・ます」で語ったりもする。「です・ます」の私は私人であり、話しかける対象に対して格上か格下か、どちらかの立場が意識されていると指摘されている。

社会人は特に理由がなければ、「私」が公人として不特定多数に語る「だ・である」を選びなさいと著者は忠告している。

高等技術としては、基本は禁じ手の「です・ます」体と「だ・である」体を混ぜて効果を出す手法などが紹介されていた。この方法は私も時々試すのだが、成功すると劇的効果がある。でも大抵はすべってしまう。難しいので普通はやめておきなさいとのこと。はい。
■文章を書くときに気になる二つのこと

この本で一番、核心をえぐられたのが以下の率直な指摘。


文章を書くときにいつも気になっているのは、次の二つのことのバランスをどうとるかである。その二つとはこうだ。

1 言いたいこと、伝えたいことが曇りなく読み手に伝わるかどうか
2 この文章を書いている私が利口そうに見えるかどうか

先生その通りです、その正直さに脱帽です。

1だけであれば噛み砕いて書けばいいだけだから推敲を重ねれば、ある程度はうまく書ける。だが、わかりやすく書くと平坦で面白みがなくなる。逆に2ばかり考えていると凝った難しい文章になってしまう。余程の書き手でなければ失敗する。スケベ心はいったん忘れて、1を意識して書きなさいとアドバイスがある。


品格は文章テクニックでは生み出せない。それをめざすなら、人間性を高めるしかないのである

まあ、それはそうですが根がスケベなもんで...。

精進しなければ。

この本は著者の書き下ろし文例がたくさん掲載されているのが参考になる。身近な上級者が、キミのフォームはここをこう変えたらいいよ式の、実技指導をしてくれる内容で分かりやすい。とっかかりやすい。

Passion For The Future: 40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

Passion For The Future: 「分かりやすい文章」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

Passion For The Future: 人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

Passion For The Future: 人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

Passion For The Future: 書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

Passion For The Future: 大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html


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Posted by daiya at 2004年11月10日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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