Books-Economy: 2005年2月アーカイブ

・これから情報・通信市場で何が起こるのか IT市場ナビゲーター
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野村総研が2000年から毎年出版しているIT市場ナビゲーターの2005年度版。2009年までのIT市場の各分野の動向予測集。現状分析と予測の根拠、たくさんのグラフがあり、IT分野の企画に関わるマネージャー、マーケター、コンサルタントならば必携の一冊。

それは本音を言ってしまえば野村総合研究所(NRI)が出版しているからだ(笑)。

企画提案において、

「NRIの調べによるとこの分野の市場規模は来年度で○千億円規模です」

と正当に使えば、とりあえず、無難である。

会議で誰もわからない数字があったらトイレでカンニングし、

「先ほどの件ですがDSL市場は2007年度で1730億世帯と予測されていたと思います」

とやればデータマンとして株を上げられる。

少しひねって、

「NRIはこう分析しているが、実態を知るものの意見としては本当はこうなんです」

と”賢いワタシ”をアピールする使い方もあるだろう。

「調べておきます」で後日、メール回答するのにももちろん便利だ。

私も買って2週間で何度も仕事に役立っており、これで2000円は安い。

書評する本ではないが、目次の各章に対して短くつぶやきを書いてみる。

【主要目次】

序章 2009年までのIT市場トレンド

第1章 携帯電話市場
 1.1 キャリア市場
 1.2 モバイルプラットフォーム市場
 1.3 モバイル系コンテンツ市場
 1.4 モバイル系ソリューション市場
 1.5 携帯電話販売代理店市場

携帯電話は2004年1月で契約数8000万。世界での利用者は12億人。2006年10月の番号ポータビリティの導入で携帯キャリアの乗換えが促進される。結果、得をするのはau、損をするのがドコモの見込み。ソフトバンク参入はかく乱要素。キャリア各社は囲い込みに必死なので、他との差別化となるサービス、コンテンツを提供するビジネスが求めれている模様。

第2章 ブロードバンド市場
 2.1 DSL市場
 2.2 FTTH市場
 2.3 ケーブルインターネット市場
 2.4 公衆無線LAN市場
 2.5 専用線・IP-VPN市場
 2.6 ISP市場
 2.7 IP電話市場

2005年にDSLは1600万世帯だが今後の伸びは緩やかに。トリプルプレイ(高速インターネット、IP電話、映像配信)で、FTTHへの移行を進めたいキャリアと、移行メリットを感じないユーザの、かみあわない日々が今後も続く見込み。個人的には”無線LANでユビキタスホーム”系の何かが市場の突破口になるのではないかと思っている。

第3章 eビジネス・ライフ市場
 3.1 インターネット広告市場
 3.2 BtoC EC市場
 3.3 ネットトークション市場
 3.4 オンラインゲーム市場
 3.5 電子書籍市場
 3.6 音楽配信市場
 3.7 映像配信市場
 3.8 eラーニング市場

2003年の広告市場規模は5兆6841億円、インターネット広告市場は2.1%の1183億円。キーワード連動型広告が市場を牽引し順調に成長。ネット通販は2003年に2.2兆円だったが2009年には5.5兆円に達する見込み。日本のコンシューマの消費には「利便性消費」「安さ納得消費」「プレミアム消費」「徹底探索消費」のマトリクスがある説に深く共感。この図式は使える。

第4章 放送市場
 4.1 地上デジタル放送市場
 4.2 衛星デジタル放送市場
 4.3 ケーブルテレビ市場

2011年地上波デジタルへの完全移行は、インフラ整備や、ユーザの受像機買い替えペースと歩調が合わず、やはり困難な模様。デジ波は難視聴区域におけるCATVを圧迫するという意見になるほど。1セグ放送は「画像の美しさ」「電池持続時間の長さ」「月額固定料金」が鍵だそうだが、ケータイでテレビを見るかな、私は半信半疑。

第5章 ハード市場
 5.1 デジタル情報家電市場
 5.2 パソコン市場
 5.3 携帯電話端末市場
 5.4 車載情報端末市場
 5.5 デジタルカメラ市場
 5.6 フラットパネルディスプレイ市場

パソコンは途上国の需要増加と先進国の2台目需要が牽引で単価下落、成長率は相当低くなるとのこと。まさにそれはiMac Mini。携帯電話端末はローエンドへシフトの見込み。高い最新の高機能携帯の時代が終わるのか。

第6章 プラットフォーム市場
 6.1 電子認証市場
 6.2 課金・決済市場
 6.3 ICカード市場
 6.4 RFID市場

RFIDの有望分野は 製造業(生産管理)、アパレル(流通)、運輸業(管理)、スーパーマーケット(実証実験レベル)と、生活者から距離。2009年度のRFID関連市場規模は1000億円。小さいと思う。2009年には次の技術が登場しているのではないか?。私たちが生活の中で利用する技術にはならないのだろうか。

第7章 セキュリティ市場
 7.1 ウィルス対策市場
 7.2 不正アクセス防止製品市場
 7.3 電磁波問題対策市場
 7.4 バイオメトリクス認証機器市場

企業システムのウィルス対策市場は2003年で310億円。2009年に440億円。コンシューマ向けは2003年に220億円が、2009年に560億円へ。携帯電話向けやデジタル情報家電向けのウィルス対策市場が潜在するという。ウィルスが勝手に電話をかけたり、ビデオ録画したりするのはPC以上に怖い。ありえる話だ。

仕事で即使える本である。

・現代消費のニュートレンド―消費を活性化する18のキーワード
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001859.html

成功前夜 21の起業ストーリー
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ラジオJ-WAVEのベンチャー社長対談を書籍化。ベンチャースピリッツが25本。薄い本だが内容はアツい。こういう本を読むと、とっくに起業済なのにまた起業したくなる。

・J-WAVE WEBSITE : Make IT 21
http://www.j-wave.co.jp/original/makeit21/
毎週、話題の起業家を招いて成功の秘訣を聴く。Webがとても充実している。

この本に登場する21人の個性的な起業家の顔ぶれ。

高田 明(株式会社ジャパネットたかた 代表取締役社長)
和田裕美(株式会社ペリエ 代表取締役社長)
藤井孝一(週末起業フォーラム 代表)
安田佳生(株式会社ワイキューブ 代表取締役社長)
直江文忠(サンクチュアリ株式会社 代表取締役)
吉野幸則(株式会社バルチック・システム 代表取締役社長)
小森伸昭(アニコム 理事長)
平野岳史(株式会社フルキャスト代表取締役)
野坂英吾 (株式会社トレジャー・ファクトリー 代表取締役社長)
杉本哲哉 (株式会社マクロミル 代表取締役社長CEO)
福井泰代 (株式会社ナビット 代表取締役)
石橋博良 (株式会社ウェザーニューズ 代表取締役会長兼社長)
遠山正道 (株式会社スマイルズ 代表取締役社長)
川崎貴子 (株式会社ジョヤンテ 代表取締役社長)
岡田賢一郎 (株式会社ちゃんと 代表取締役社長)
堀 雄一郎 (フュージョンインターナショナル・トレーディング 代表取締役社長)
経沢香保子 (トレンダーズ株式会社 代表取締役)
野口美佳 (株式会社ピーチ・ジョン 代表取締役社長)
伊藤正裕 (株式会社ヤッパ 代表取締役社長)
梶原文生 (株式会社都市デザインシステム 代表取締役社長)
安田 久 (H.Y.JAPANグループ 代表)

顔写真とプロフィールとラジオ対談の内容

起業の動機、経緯はさまざま。かなり無茶な人たちもいる。

銀行が事業に融資してくれないので結婚資金としてお金を借りて会社を設立したバルチック・システムの吉野社長、東京都内の地下鉄250駅を歩いて出口マップを作って起業した主婦の福井社長、サラ金に500万円の借金があって普通に働いたら返せないので起業したH.Y.JAPANグループの安田社長、本気を表すために指を切って血判状をつくり出資者を驚かせたサンクチュアリの直江社長。

対談内容は十人十色。とにかく皆、ユニークでキャラが立っていることだけが共通点。その個性に周りが、魅了されたり反発したりして、化学反応が起きた結果、会社が大きくなっているのだろう。

■なぜリスクを背負って起業するのか?

なぜリスクを背負って起業するのか?

私も起業家なので自分の答えをここに書いてみると結局のところ「Regret minimizing framework」で考えた結果である。同じような答えをする社長がこの本にも多かった。この
「Regret minimizing framework」はもともとはアマゾンの創業者の言葉。

以下のコラムが参考になるので長文引用。(私の起業には、学生時代に出会ったこの西川社長の影響もあったりするので)

・第9回 人生の成功の定義をかえよう - CNET Japan
http://japan.cnet.com/column/nishikawa/story/0,2000047995,20054706,00.htm

ビットバレーの提唱者でネットエイジ西川社長の起業コラム。


Regret minimizing framework とは?

 Amazon.comの創業者のJeff Bezosは、30歳のとき早くもヘッジファンドのシニアバイスプレジデントというポストについていました。が、そのニューヨークでの羽振りのいい生活をきっぱり捨てて、1995年、ワゴン車に妻と愛犬をのせ、北米大陸を横断し、徒手空拳、西海岸のシアトルでAmazon.comを創業しました。以来10年もたたずして世界中の人が便利に使う時価総額約1兆5000億円の巨大eコマース企業、Amazon.comを確立したのです。また、Forbesによると、個人的にも2900億円程度の資産を築いています。

 余談ですが、私は1999年にシアトルにいってBezosに会ったことがあります。そのときは、この目の前にいるチノパンツに白いシャツの、よく高笑いするおにいさんが、数千億円の資産家とはとても思えなかったです。それほど、質素でラフな印象でした。

 そのBezosがなぜ裕福なニューヨークの生活を捨て、ゼロからAmazon.comをやろうと決意したのかについて、WiredやThe Motley Foolに記事がありました。彼の言葉を簡単にまとめるとこのような感じです。「インターネットが急速な勢いで伸びているのを目の当たりにしたとき、僕は『regret minimization framework』という考え方を自分に信じ込ませたんだ。つまり、自分が80歳くらいになって死の床にあって自分の人生を振り返ったとき、後悔することがもっとも少なくなるように生きようと。投資銀行での業績や期末のボーナス がどうのこうの、とかそんなことは、いまは一喜一憂するけれど、80歳になったら全く覚えているわけないんだ。ところが、もしこのインターネット革命の波に乗れたにもかかわらず、乗らずに80歳を迎えたとしたら、悔やんでも悔やみきれないほど「自分はアホだった」と後悔するに違いないと確信したのさ。そうなったらぜんぜんリスキーなんて思わなくなった。すぐ行動したよ」

 彼の「regret minimization framework」つまり、「後悔極小化思考」も皆さんの起業決意への背中をポンと押してくれるのではないでしょうか

■起業家100人がブログを開始したドリームゲート

昨日、ある場所でドリームゲートのスタッフの方とお会いした。ドリームゲートは経済産業省後援の起業支援サービスである。最近どうですか?と聞いたら、「いま起業家100人にブログを書いてもらう企画をやってるんですよ」という。

「すごい話ですね、それは」と思った。

サイトを見に行くと、

起業家100人挑戦日記/独立・起業に関するブログならドリームゲートブログ
http://dblog.dreamgate.gr.jp/100entre.php
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すごいことになっていた。

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一覧ページの100人の顔写真にまず圧倒される。

本当にベンチャー社長100人がブログを書いている。しかも、ちゃんと更新されている。素晴らしい。

起業家たちは日々、自分のビジネスに必要なものや困っていることを書いている。起業家ブログ同士のリンクやトラックバックがきっかけで、協力提携やパートナー探しもできそうだ。ただ100個もあると全部見ることは難しい。マッチングの仕掛けを追加するべきだ。

そこでちょうどいい具合に、私の会社はマッチングに使えるエンジン「といえばサーバ」を開発している。これを使うと言語処理を行ってキーワードの類似した記事を抽出できる。起業家のキーワード一覧ページも作成できたりもする。Web運営スタッフ数人分の働きができるはずだ。

(ここで揉み手)一台どうですか?ドリームゲート様。

#と、最後は起業家らしく売り込みでまとめてみました

関連情報:

・ 起業人 成功するには理由がある
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000712.html

・一人シリコンバレー創業プロジェクト
http://www.hitorisilicon.com/