2004年03月06日

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・バカの壁
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重層的な意味で面白い駄作。

Asahi.comによると、


爆発的な売れ行きが続いている養老孟司さんの著書「バカの壁」(新潮新書)の発行部数が19日、累計で311万部に達し、ノンフィクション系新書の新記録をつくった。出版関係者によると、これまでの1位は70年出版の塩月弥栄子さんの「冠婚葬祭入門」(光文社カッパホームス)の308万3000部。「バカの壁」は昨年4月の出版以来、約10カ月間で記録を塗り替えた。

とのこと。下世話な話だが、つい計算すると、著者の印税が10%なら2億円くらいの稼ぎになる計算である。

■バカの壁が理解不能の原因

現代は、価値観は多様化し、知識は細分化、専門化されている。生活様式もバリエーションが豊かになっている。その結果、共通理解の土台となるものがどんどん小さくなっている。人と人とがわかりあうことが難しくなっている現代。このわかりあえない世界の最大の原因を「バカの壁」とし、それを乗り越えるにはどうしたらよいかを語るのがこの本である。

著者は冒頭でバカの壁を次の一元方程式で説明する。

y=ax

説明を引用すると「では、五感から入力して運動系から出力する間、脳は何をしているか。入力された情報を脳の中で動かしているわけです。何らかの入力情報xに、脳の中でaという係数をかけて出てきた結果、反応がyというモデルです。」。

問題は係数aであるが、これはその人間が感じている「現実の重み」と説明される。男子学生に出産のビデオを見せても反応がなく、女子学生は同じビデオからたくさんの発見をしたという実験の話を著者はここで引き合いにだす。つまり、男子学生にとってaは限りなくゼロに近かったので出力もゼロだった。女子学生はaが高かったので、出力も大きかったというわけだ。

このaという係数が限りなくゼロに近い状態が一般化したことこそ、現代のコミュニケーション不全の原因なのだと著者は言う。人間はわかっていること、わかりたいことしかわからない。そこには、a=0というバカの壁があるからだというのがこの本のテーマだ。

■前半はいい。後半は駄作の極み

前半はいい。脳科学をわかりやすく噛み砕いて、一般に伝えてきた著者が、その語りかけの能力の真骨頂を発揮している感がある。著者の出発点となった「唯脳論」以降、ずっと語ってきた脳、無意識、身体性、哲学といったテーマをメスにして、現代のコミュニケーション不全を解剖していく。一般向け新書ということもあり、科学的なディティールは大胆に省きながらも、数多くのこころと脳の研究の知識を披露しながら、「理解」をめぐる著者の力強い主張が明白に展開されていく。

一元論的にしか物事を考えない現代の風潮の危険さ、そうした人間の理解の論理的根拠の希薄さを批判する部分は多くの読者が共感したはずである。ここまでは良かった。

だが、後半からテーマが、根拠のない著者の単なるぼやきへ置き換えられていき、急につまらなくなる。個人的には、「二、三歩譲ってあの養老孟司の言うことだから許せる」というレベルを超えてしまっており、「後半は駄作である」と言い切れる。口述筆記で構成したこの本、語っていくうちに、いつのまにか、著者自身が自らのバカの壁にとらわれてしまったのではなかろうか。

■一元論を批判する一元論

著者の教える学生が授業を聞かないことや、考えが浅いこと、我慢が足りない子どもたちが増えたこと、ホームレスが増えたこと、次々にバカの壁のせいだと嘆いて見せるが、果たして、それらの問題はバカの壁の問題であろうか?。

著者は、「人間だからこうだろう」という常識がバカの壁を突破する答えであると考えているようだが、おかしいと思う。つまり、著者の提示した一次方程式を、その答えに合うように書き換えると、bを常識とおいて、

y=ax+b

ということになるだろうか。

現代においてaxがゼロもしくは無限小であると著者は繰り返し述べているわけだから、事実上、この方程式はy=bということになる。それこそ著者が批判してきた一元論そのものである。

日常の思い込みや宗教といったバイアスであるaではなく、「殴られれば痛い」だとか、「親切にされれば嬉しい」だとか、人間が共通に持つ、生物学的に共有する感性をb=「常識」としようと著者は言う。他の識者が語るなら、心地よく受け入れやすい話ではある。

だが、そもそも長年に渡ってその共通の常識の怪しさを、身体性だとか無意識というテーマで解体してきたのが養老孟司という人だったのではないのか。この期に及んで、自身のジェネレーションギャップのぼやきを正当化するために方程式を持ち出して、本にする気持ちが私にはよく分からない。

私が読んできた養老孟司は科学者で哲学者でもっと慎重な語りをする、聡明な人だった。なぜこの本を今書いたのだろう?わからない。それとも、バカの壁にさえぎられているのは私の方なのだろうか?

・「検証!バカ売れ『バカの壁』−売れたワケをぜひとも知りたい」
http://media.excite.co.jp/book/news/topics/056/


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Posted by daiya at 2004年03月06日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
Daiya Hashimoto. Get yours at bighugelabs.com/flickr
Comments

全く同感。後半部分は駄作。関連本が沢山出ているようですが、読む価値のありそうなものはありますか?

Posted by: アジア海外駐在員便利帳 at 2004年03月07日 14:27

ご無沙汰してます。

僕もほぼ同感です(苦笑)。養老孟司氏の本はこの本しか読んでなくて、こんな人が東大の教授なんだからどうしようもないよな、と思ったものですが、他の著作はよいものなのでしょうか? 養老孟司氏でオススメあったら知りたいです。

Posted by: shintaro at 2004年03月08日 04:02

神と人の差間がコツコツと足り壊すべき最大の壁です。これが学問をすることであり、高みに上って視野を広くすることによって、精神、魂が輝き、神の子が神に成長することであります。畢竟、神は人が考え出したもの、とする孟司氏は、世界の中の霊的な働きに盲目で無関心な「バカ」であります。
地球の大陸は人間の形をしており、紛争はその首(中東)で頻発しています。米国は腰の国ですから、人体(世界)の最大の力を与えられているのです。
腰を正しくコントロールすべきは臍(の緒)の日本です。日本は龍体であり、47都道府県の県境線は数多の観音の顔を書き出しており、青森県は十和田湖を口としたイエスの横顔であり、八戸にはキリストの墓があります。新紐と青森の双子タワーは北緯四十一度で繋がっています。下北半島は孔雀の頭であり、紅白歌合戦では孔雀の羽が開かないというアクシデントがありました。
四月七日はキリストの受刑の日であり、シワス七日は真珠湾攻撃、愛子様の命名の日であります。等々、天地一切は神の声です。日本語の四十八音はヨハネ(與羽根)を教える鍵であり、日本語が世界を照らすと予言されてきたのです。
一神二元三位一体が幸せへの真理です。頭と胎、精神と肉欲を考えて生きることが辺の字です。行動に首をかけることによって、人は神に帰る(カンガエルと約束されているのです。ですから脳の一番上は足の神経につながっており、足は天思を開支するものと示されているのです。
人は三身にI愛を立てれば王となり、主に迎えられる、自己完結できる者とされています。私達がこの思合わせの仕組みにのることを祈り(意乗り)といい、この三途の川の波(火水、月日、物霊)を知ることが学問の意味、目的であります。
愚と賢、馬と鹿の分れ目は、神に盲の烏か、水(未図=物=始め)を知る鳩(苦を究する)か、であるとノア(野開け)に教えられています。箱舟(人体=人知)の外を見る努力こそが羽根を育てることであり、殻を破って(破られたとき=ハルマゲドン)天に飛ぶことのできる道であるのです
教育は、ト×子土ノで、天磨に駆ける宿命の子を土(場架の壁=自然=我慾=火水=神)を切り裁ける者に育てるという意味です。育は月が云う、で、腰の米国、物主幸福論の利己主義をミカエル戦いが真の己を育てるのです。魂は鬼(腹の虫の蝮)がものを云う、仇が粋人を作るのです。
神考のない深考はない、神向なくして幸せへの進行、平和、平成、螺鈿(憂さ間、尾運、ラデン)への成就はないのです。明仁なれ、徳仁たれ、旭(九番目の姫=秘密)に愛を立てる子たれ、と神示、神字されているのです。

Posted by: 秀思學 at 2004年03月28日 03:35

スーパー亀レスですが

>養老孟司氏でオススメあったら知りたいです。
ということで
「脳と心の地形図―ビジュアル版」ですね。2も出ました(読んでません)。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4562032707/250-0479299-6448210
これを読んでいたので本著は半分ぐらいで読んでいられなくなりました。
コーヒーブレイクの怪しさ(あぁまた微小管か…とか)がまた最高です。

Posted by: 名前だけは勘弁して at 2004年04月14日 03:19

私も、「バカの壁」を読み、この人こそが自分の「バカの壁」の中
しか見ていない、頭の堅い親父ではないかと思いました。
こんな本が売れるなんて、理由がわかりません。日本人は、ちょっ
と偉い肩書きのある人が言う事だと、ふんふんと受け入れてしまう
ようですね。この著者が、もしも、もっと平凡な経歴を持つ別の人
だったら、こんなに売れなかったはずです。それと、タイトルが人
々の興味をそそったのでしょうね。
彼の思い込み、決め付けは本当に、バカの壁の中で生きている人間
のものとしか思えない。そんな本を読んで感心する日本人達も、本
当にバカだらけだ。

Posted by: Kaba no kabe at 2004年05月04日 05:17

最後の学門「秀思學」のすすめ、がやっとホームページとして9月末に発足しました。アドレスは www.shushigaku.com です。学門、宗教、世界観、人生観の革命をおこさなければ破滅に向かう現状を救う学門です。荊の冠をおしゃれな蓮華の花冠に替えなければ十字架刑になるというイエスの予言が成熟する秋(冬の蘇名立)は深まっております。じきに地は閉ざされるので、時間がないのです。世界と個人がミカエル(反省)大天使に蘇られることを祈っています。

Posted by: 仁村 秀雄 at 2005年10月13日 14:34

バカの壁 実感できるかもしれません。下記ブログです。
ハッとするコメント期待しています。
http://plaza.rakuten.co.jp/trendcyclone/diary/200602090000/

Posted by: auzy at 2006年02月18日 16:48

レビューを見て思いました。養老先生が言いたいことは、y=ax+bでは無くて、y=ax+bxでは無いでしょうか?
常識の重みをアウトプットに加えていく必要がある。bに対して、感受性が無いとどうしようも無いという反論が出そうですが・・・

Posted by: 田吾作 at 2006年05月20日 15:58

現在、「バカの壁」読んでいるところです。

この本を読む前に、同じ著者の「運のつき」を読み、面白かったので、この「バカの壁」も読んでみようかな、と思いました。

「バカの壁」読んでいて、早速思うことは、「運のつき」の方が面白いかな、ってこと。

私としては、どちらの本も「脳のはたらき」についてはどうでもよく、この一風変わった様に思える著者が、どんな風に考えているのかに興味があったので、「そっかあ、こんな風に考える人なのね〜」と思えて、読んで良かったと思います。

ただ、そういう観点からみても、というか、そう観点からみてるから「バカの壁」より「運のつき」の方が面白く感じられたのかも。

でも、今は「バカの壁」を読んでいるので「なんでこの本がそれ程ヒットしたのか」という観点で、この先読んでいってみようかと思います。

Posted by: akiko at 2007年05月16日 11:58
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