2006年04月19日

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)
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上巻に続いて、ルワンダ、ドミニカ共和国とハイチ、中国、オーストラリアがケーススタディとして取り上げられる。環境の初期条件と社会の選択がいかにそれぞれの社会に影響を与えてきたかがよくわかる。

ドミニカとハイチは一つの島にある二つの国家であるが、現在ドミニカの森林は国土の28%を占めるのに対して、ハイチは1%に過ぎない。かつてはハイチの方が先に農業経済を発展させ、栄えた国であったが、いまやハイチは最貧国である。経済的にも比較的安定したドミニカとは環境政策の違いが明暗を分けた。ドミニカは独裁的政治家による環境保護が強行された。それに対しハイチの一時的繁栄は、経済優先で、森林資源と土壌を犠牲にしたものであった。

社会が破滅的な決断を下すのはなぜか?。イースター島の最後の一本のヤシの木を切り倒した住民は何を考えていたのか?彼らは利益に眼がくらんでいたのか、それともまったく無知だったのか?。

著者は「這い進む常態」「風景健忘症」を破滅的決断の原因として挙げている。這い進む常態とは、正常性の基準が、感知できないほどゆっくりと下降する状態を指す。樹木は昨年より僅かに減っているが、異常ではないという判断を何十年も繰り返した結果、最後の一本になってしまうということだ。風景健忘症とは、ゆるやかな下降の中で、50年前はどうだったかを、人々が忘れてしまうことを指す。

恐らく最後の一本のヤシの木が切り倒されたとき、木材はほとんど使われていなかったのだから、ヤシの木は経済的価値がほとんどなかった。だから、誰も気にしなかった可能性がある。地球温暖化でゆでがえるになりそうな現代人と似た状況だったかもしれないと示唆がある。

たくさんのケーススタディから抽出した文明の崩壊の要因は、環境ストレスと人口過密にあると結論される。この二つの問題を抱えた地域は、実際、政治経済的にも不安定な国々である。この二つの要因がやがて直接的、間接的に文明の崩壊をもたらすのだ。

現代世界が直面する深刻な環境問題として12の問題が挙げられている。天然資源の破壊、大気の汚染、エネルギー問題、生物の多様性、土壌の汚染などどれも重要な問題ばかりだ。そしてそれぞれの問題は複雑に絡み合っている。

「今日の世界がかかえている最も重要な環境問題、人口問題をひとつ挙げるとすれば、それは何か?」という質問に著者は「最も重要な問題をひとつあげるとすれば、それは問題を順位づけして、ひとつに絞ろうとするわれわれの誤った姿勢だ!」と答えている。

12の問題をいっぺんに解決しなければならない。そのためには「長期的な企て」と「根本的な価値観の見直し」が必要だと著者は述べている。具体的な施策の提案も説得力がある。「持続可能な発展」を過去の文明崩壊の複数のケースから考える内容になっている。

そして「環境と経済の兼ね合いが大事」「科学技術がわたしたちの問題を解決してくれる」「資源を使い果たしたら別の資源を使えばいい」「何十年もの間、生活条件は向上し続けている」などの反環境保護派や消極派の代表意見を個別に論破していく。

解決への道のりは厳しいが、著者曰く、現代の私たちにはテレビと考古学がある。私たちは同時代の他の社会が何をしているか知ることができ、過去の経験から学ぶことができる。テレビはもちろんインターネットと言い換えてもいいはずだ。

地球の全生命を乗せた船が少しずつ沈んでいる。皆で力を合わせて、大急ぎで水をかきださないと、誰も生き残れないということをこの本は警告している。


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Posted by daiya at 2006年04月19日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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