2006年02月08日

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・インフルエンザ危機(クライシス)
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ここ数年、インフルエンザの大流行(パンデミック)が近い将来発生し、多数の犠牲者が出るという予測を多くの専門家がしているようである。もっと世の中は注意を向けるべきなのではないだろうか。

過去のパンデミックは20世紀に限ると1917年〜18年のスペイン風邪、1957年のアジア風邪、1968年のホンコン風邪の3度がある。第一次世界大戦中に流行したスペイン風邪は、移動する兵隊と共に拡散し、世界で5億人の感染者がでて、死亡者数は2000万人、日本だけでも2000万人の感染者と38万人の死亡者がでたという。当時の日本の人口はおよそ5500万人だったので4割の日本人が感染した計算になる。交通手段の発達した現代で発生した場合、世界人口の30%が感染するといわれる。大震災やテロの何倍、何十倍もの犠牲者がでてしまう。

インフルエンザは風邪の一種であるが、症状の重さ、伝播力の強さが極めて高いのが特徴であるそうだ。感染すると1日から3日の間に38度から41度の高熱がでて、頭痛や喉の痛み、関節の痛み、悪寒を伴うことが多いとのこと。ふつうは一週間ほどで熱が下がるが、高齢者と子供は肺炎を引き起こす可能性があるそうだ。

現在知られている微生物(ウィルスと細菌)の危険度は日本ではP1からP4という度数で分類されている。

P1 人に感染してもあまり病気を起こさないもの 遺伝子組み換え用大腸菌など
P2 病気にはかかるものの、重篤な症状は起こさないもの 一般インフルエンザ
P3 病原性が比較的高いもの 高病原性鳥インフルエンザ
P4 最高危険レベル エボラウィルス、天然痘ウィルス

この本が主に扱う恐怖はP3レベルの鳥インフルエンザ。かなり危ない。

もともとは一部の鳥の病気であったが、ニワトリやブタにも感染するように変異し、やがて家畜として触れ合うヒトにも感染するようになったらしい。こうした新型インフルエンザ発生の仕組みが一般向けに要約されている。ちょっと難解な部分もあるが、ウィルスと細菌の違い、耐性を持つウィルスが発生する仕組み、37年以上もの間なぜ同じウィルスが定期発生するのか(1968のホンコン風邪の子孫がまだ流行している)、

著者は世界で初めてインフルエンザを人工的に合成することに成功した人物で、この分野の世界的権威。タイトルがものものしいが、この本はインフルエンザ危機警告だけの内容ではない。研究を積み重ねて大きな発見をする科学者の醍醐味が、若い研究者や学生向けに、親しみやすい口調で語られている。インフルエンザ合成に成功した際に訪問してきたCIAエージェントとのやりとりだとか、激しい競争の働く米国の研究者世界の内幕など、ちょっと際どい記述もあって、門外漢でも楽しめた。

近い将来、関東大震災がくるぞと専門家が警告している。同時にインフルエンザの大流行があるぞと専門家が警告している。どちらも対策が重要だが、どうやら被害規模の大きさや、対策効果を考えると、インフルエンザ対策に日本はもっと力をいれるべきなのではないか、と思った。インフルエンザの大流行は世界の人口を左右する規模の大問題。

欧米からの「子供を利用している」という批判で、1926年から94年まで続いたインフルエンザの学童集団予防接種の義務は中止されている(知らなかった、そうなのか)。この期間、子供の羅漢率を抑えることで社会全体への伝播を効果的に減らすことができていたそうで、世界に誇れる仕組みだったのに、と著者は嘆いている。

こんな本を読みながら、実はちょっと風邪気味。インフルエンザではなさそうだけれど。
みなさん、気をつけましょう。


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Posted by daiya at 2006年02月08日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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