2006年04月30日

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・電波利権
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元NHK出身で放送と通信に詳しい池田信夫氏の著。

2011年7月24日。テレビ地上波が完全停止する予定である。最近の電器店のテレビ売り場には必ずその表示があり、デジタル放送対応テレビを購入することをすすめられる。しかし、この政府のアナログ停波はうまくいきそうにないという見方が書かれている。


家庭に設置されているテレビは。全国で1億3000万台近くあるといわれる。今のペースで普及が進んだとすれば、11年になってもそのうち3000万台ぐらいが置き換わるだけで、1億台近いテレビがアナログのままである。こんな状態で電波を止めたら1億台ものテレビが粗大ゴミと化し、視聴者はパニックになり、テレビ局の広告収入も激減するだろう。

カラー放送が始まってから白黒放送をやめるまでに25年がかかったそうである。今回の「デジタル化」は消費者のメリットがよくわからない。デジタルだから高画質ということでもなければ、インターネットとつながるという意味でもない。デジタル化の理由は、周波数帯域がごちゃごちゃになっているから、ちょっと整理しましょう程度のことなのだ。

日本の電波の周波数帯域のうち、UHF帯は主にテレビと携帯電話などに割り当てられている。帯域を使うには電波使用料を事業者は政府に支払う。この内訳を見ると、帯域の11%しか使わない携帯電話が電波料の全体の93%以上を支払っている。放送は1%に過ぎない。後から登場した携帯電話ユーザの電波料がテレビ放送の費用を支えている。

著者は、現行の電波利用料の制度は、効率的に利用すれば利用するほど料金が高くなる逆インセンティブの構造が問題だと指摘している。基地局の数に対して課金をするため、小さな基地局が無数にある携帯電話事業者は、狭い帯域しか使っていないのに、高い電波料を支払わねばならない。

おまけに政治と既得権が絡み合い電波の非効率な使われ方がされている。新聞とテレビの複合体に免許を与えたのは、時の有力政治家であった。あまり使われることがない業務用無線が、需要の高い帯域を占有しており、その利権を特殊法人が守っている。今回のデジタル化も、デジタル化するだけなら衛星を使えば200億円で可能なのに、国費を投入して1兆円も使っている。放送と通信の行政に対して革新的意見で知られる著者の手厳しい批判と、具体的な提案が多数ある。

だが、将来的には無線LANとインターネットが放送通信のインフラとして、どこにでもあるものになってしまい、「電波の希少性」をめぐる問題は消えてなくなってしまうのではないかという予測が最後にあった。たしかに視聴者にとって、途中が電波であろうとケーブルであろうとインターネットであろうと、面白い番組を見られるのなら、変わらないのである。

たとえばYAHOO!JAPANの利用者は3千万人いる。テレビ視聴率に換算すると約30%である。テレビ受像機がネット対応し、チャンネルを変えていくと現行地上波と並んでYAHOO!チャンネルが映るような状況になれば、電波の希少性をベースにしたテレビの世界の秩序は大きく再編されていくのではないかと、この本を読んで考えてみた。


・テレビとネットの近未来 ブロードバンド・ニュースセンター
http://www.tvblog.jp/tvnet/


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Posted by daiya at 2006年04月30日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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Comments

一応、デジタル化で基本的にHD放送になるので、画質が上がるという言い訳は成り立つのではないかと。

Posted by: 通りすがり at 2006年05月01日 19:52
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