2006年08月23日

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結婚4年目の若い夫婦バーニーとカレンは不妊に悩んでいた。カウンセリングを受けるが成果はなく、二人の仲はぎくしゃくしたものになっていく。そんな時、バーニーの勤務先で放射能事故が発生する。会社の発表によれば、汚染は最小限にとどまり大惨事は防がれたというが、事故から数週間後、バーニーとカレンの体には吐き気やめまいなどの奇妙な異変が…。しかもこの最悪の時期に、カレンの妊娠が判明する。はたして、胎児に放射能の影響はあるのか?夫婦はこの子に生を与えるべきか?―突然の災厄に翻弄される夫婦が経験する、愛の崩壊と再生の軌跡を描きあげた衝撃作。

著者は「アルジャーノンに花束を」「24人のビリー・ミリガン」「眠り姫」などで知られるベストセラー作家 ダニエル・キイス。この邦訳の出版は2005年12月とつい最近だが、米国での初版は、37年前の1968年にでている。

その間には、巻末のまとめで紹介されているように、原発や産業施設での放射線事故が世界中で頻発した。一般の生活者が突然被爆する、キイスが描いた悲劇は現実のものになった。世界への注意喚起の意味を込めての再版ということらしい。

この本のテーマは放射能汚染の恐怖だけではない。絶望的な状況に追い込まれた人間の心理の葛藤が中盤以降のメインテーマになる。主人公の夫婦は、汚染の被害者なのに加害者扱いされる。世間と対立しながら、ギリギリの心身状況で、愛や宗教や芸術に救いをみつけようともがく。被爆の症状の悪化と妊娠の進行が物語を緊迫させる。

キイスのストーリーテリングのうまさ、人間心理の洞察の深さがこの本でも味わえる。テーマは重いが一気に読ませる。


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Posted by daiya at 2006年08月23日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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