2006年11月08日

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・手紙
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東野圭吾は、今年第134回直木賞を「容疑者Xの献身」で受賞するまでに6回も同賞候補にノミネートされてきた。この「手紙」は129回候補作。当時、選に漏れたとはいえ傑作であり、この秋に映画化されて上映中である。

・映画 「手紙」公式サイト
http://www.tegami-movie.jp/

予告編ムービーがある。微妙に原作がアレンジされているらしい。

映画の「手紙」はまだ観ていないが、私が東野圭吾作品にはじめて触れたのは「レイクサイド」の映画版「レイクサイド・マーダー・ストーリー」であった。保護者同伴のお受験対策合宿で愛人殺人事件が起き、それをなかったことにしようとする親たちの隠蔽工作が意外な展開を見せるドラマだ。

・映画『レイクサイドマーダーケース』
http://www.lakeside-mc.com/index.html
「お受験合宿の夜、お父さんの愛人が殺されました。」。容疑者は妻(薬師丸ひろこ)。原作はベストセラー作家・東野圭吾が2002年に書き下ろしたミステリー小説「レイクサイド」。個性派俳優揃いで原作の面白さが万全に活きた。演劇的。


犯罪ドラマを舞台に、世間と人間の本性を生々しく暴きだす作風は、この「手紙」でも手ごたえのある物語をつくりだしている。主人公は強盗殺人犯の弟である。進学、就職、結婚、家庭生活。主人公は不幸な境遇の中から必死に人並みの幸せをつかもうとするが、もう少しのところで唯一の肉親の取り返しのつかない過去の罪が邪魔をする。隠しても暴かれてしまう「強盗殺人犯の弟」というレッテルがすべてを台無しにしてしまうのだ。この小説は、そんな主人公の苦悩も知らない獄中の兄から、弟に毎月届く手紙をめぐる話である。

ジョン・レノンのイマジンのように、愛や絆がすべてを許して差別のない世界を実現する、というわけにはいかない。現実には愛や絆が差別を作り出すことになる。強盗殺人犯の家族に同情はしても、好き好んで近づきたい人はいない。できることなら無関係でいたいとおもうのが普通の世間の感覚だ。人種差別や部落差別と違って、真正面から戦うのが難しい種類の差別感情である。

重いテーマだが、失っても失っても常に前向きに進もうとする主人公の性格が救いになっている。出口のない迷路の中に光明を見出そうとする主人公の生き方に心を揺さぶられる。


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Posted by daiya at 2006年11月08日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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Comments

映画『レイクサイドマーダーケース』わたしも好きでした。
監督の青山さんの演出も秀逸ですが、やはり東野さんの原作がすばらしかったです。映画『手紙』も東野さんらしい作品ですね。

Posted by: gaucho at 2006年11月10日 04:59

映画『レイクサイドマーダーケース』わたしも好きでした。
監督の青山さんの演出も秀逸ですが、やはり東野さんの原作がすばらしかったです。映画『手紙』も東野さんらしい作品ですね。

Posted by: gaucho at 2006年11月10日 04:59
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