2007年02月25日

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・沖で待つ
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第134回芥川賞受賞作。他1篇併録。 2作ともおもしろかった。

部屋の鍵を渡しておくから、もし自分が死んだらパソコンのハードディスクを破壊しにきてほしい。そんな約束を相互に交わした同期入社のふたりの男女の話である。そして男の方が死ぬ。女は壊しにいく。とても現代らしい設定だなと思う。

そうそう。いまどき隠したい秘密はパソコンの中にこそあるのだよなあ。もはや手紙のラブレターをやりとりする人は珍しいが、メールのラブレターは一般的になったはずだ。デジカメや携帯カメラの時代には、写真だって書棚にあるわけではなくて、電子化されてパソコンの中にある。もちろん、アダルトサイトの画像や動画だってパソコンの中である。
彼女とのベッドシーンを撮影した画像がパソコンから流出して、Webに公開されて大騒ぎになった会社員の事件も記憶に新しい。ハードディスクは個人の秘密の宝庫なのだ。そこが感情や思い入れでいっぱいになっている。そう考えると現代の小説はもっとハードディスクを重要なモノとして筋書きに取り入れるべきだと思うし、この作品が芥川賞を受賞したのもいいことだなと思う。

携帯やメールは小説の小道具としてすでに定着している。ハードディスク小説がこれだ。USBメモリ小説や無線LAN小説、レンタルサーバ小説、検索エンジン小説、Mixi小説なんかもそのうち登場するのかな。そういうのを自分で書いてみたい気もする。

それから「働く」ということも現代の小説らしいテーマなのだと改めて気がついた。昨年度に芥川賞を受賞した「八月の路上に捨てる」(伊藤たかみ)、昨年度の直木賞の「風に舞いあがるビニールシート」も、エリートキャリア、正社員、フリーターと設定の違いはあるが、労働は主人公たちの思考や生活の中心にあるように描かれている。

もしかすると有名文学賞受賞作品における場面描写を分析すると、年々職場の割合が高くなっていたりしないだろうか。漫画「働きマン」も大ヒット中である。主役が何を職業にしている人なのかわからない小説は受けなくなっているような気がする。

ところで、「沖で待つ」の恥ずかしいハードディスク問題を解決するフリーソフトをみつけた。隠し事があるひとにおすすめ。

・死後の世界
http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se281094.html

「あなたの死後に機密書類を自動削除、遺言を自動表示

あなたは突然死んでしまった場合の事を考えた事があるでしょうか?
事故、病気、天変地異…死は突然あなたに訪れます。
本ソフトウェアは、あなたが突然死んでしまった場合の事後処理をするソフトウェアです。
死後残しておきたくない機密書類を自動で削除したり、あなたの大切な人にメッセージ(遺言)を残しておく事が出来ます。 」


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Posted by daiya at 2007年02月25日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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