2007年10月16日

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・事故と心理 なぜ事故に好かれてしまうのか
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交通事故はなぜ起きるのか、事故を起こしやすい人とはどんな人か。著者自身と世界の学者の近年の研究成果を多数引用しながら、交通心理学者として科学的に結論できることを書いている。

運転者には事故を繰り返す事故多発者というグループが存在するそうだ。

事故多発者には以下の特徴がある。

・安全への動機づけ(価値観)が低い
・注意がうまく機能しない
・隠れた刺激を見つけない(危険の予兆の発見ができない)
・自己認知が的確でない
・反応が突出する

こうした事故多発者は適性検査によってある程度事前に判別できるという話が興味深かった。適性検査は「なにを計測しているのかわからない」という批判がなされるにも関わらず、なにかを計測しており、判別結果に有意性が見いだせるというのだ。

「事故に好かれる状態は人生のある一定期間持続することがある。自己多発者は、車社会に参加する際の安全への動機づけが希薄な人である。自己を避けるためには危険をあらかじめ察知し、回避できなければならない。そうであらねばならないと思っても、なにしろ人間は言行不一致で、合理性は徹底しない。さまざまな危険に同時に遭遇したときに、注意の配分バランスが崩れたり、反応の一部が突出する。いつのまにか認知や反応に偏りが生じることがある。それを防ぐには、絶えず自己モニター機能を働かせ、自分の状態を監視する必要がある。そうでないと事故に好かれてしまう。」

事故に好かれる一定期間を経過すると、事故を起こさなくなったりするそうである。毎日長時間車に乗るタクシー運転手を調べたところ、少数特定の運転者に事故が集中していることがわかった。長期の調査を行ったところ、事故多発の傾向は、一生継続するわけではなく、数年間程度の持続した後に、事故を起こさなくなるものらしい。

そして、事故の当事者になりやすい(事故に好かれる)人は若者、女性、老人である。特に10代の事故が突出して多い。他の年齢層の倍以上である。

「年齢と性とで区切った免許人口のなかから、死亡事故の第一当事者となった人がどれだけでたかの発生率が死亡事故惹起率である。有責死亡事故率という呼び方もある。各カテゴリーの死亡事故の件数を免許保有者の人口で割って、免許保有者一万人当たりの死亡事故の発生件数としたのが図中の縦軸(死亡事故惹起率)である。たとえば十八〜十九歳の男性の免許保有者一万人のうち八人弱が死亡事故を起こしたということになる。」

若者の死亡事故惹起率は世界で共通して高く、その理由に俗説は多いが、科学的にはわかっていないと著者は正直に述べている。この本全体を通して、著者は統計や実験から、科学的に結論できることを慎重に選んで結論を述べているところが、良印象をもてた。事故の調査分析の手法を知る上でも参考になる点が多い本だ。


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Posted by daiya at 2007年10月16日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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