2008年03月03日

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・ひかりごけ
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普通の人間が、米国の陪審員制度のように、裁判に参加する裁判員制度がもうすぐ開始される。一生のうちに裁判員に選ばれる確率はだいたい67人に1人だそうだ。これ、自分が当たる確率として結構高い数字に思わないだろうか?。

・裁判員制度
http://www.saibanin.courts.go.jp/

この裁判員制度の対象となる事件は軽い犯罪ではなくて、主に殺人罪などの重罪に限定されている。そうなると複雑な事情が絡んだ事件も多いだろう。量刑も死刑にするとか無期懲役にするとかいう深刻なレベルの判断になる。プロの裁判官と協力するとはいえ、果たして一般市民が有罪無罪と量刑を決めて納得のいく結果になるのであろうか?。67分の1と聞いて私は自分が選ばれた場合を真剣に考えてしまった。

裁判員制度を考える材料としてこの問題小説が再発見されていいと思う。

この本の「ひかりごけ」は人間が人間を裁くということの不条理を描いた、武田泰淳の傑作短編小説である。北の海で遭難し飢餓状態に置かれた男たちが、仲間の死体を食べて生き延びたという戦時中の「ひかりごけ」事件を題材に、半分小説で半分戯曲という形式で極限の人間ドラマを描いている。こういうのは裁けない、と思う。

・「ひかりごけ」事件―難破船長食人犯罪の真相
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これは現実のひかりごけ事件のドキュメンタリ。「1943年、陸軍所属の徴用船が厳冬の北海道・知床岬で難破。生き残った船長と乗組員の少年の二人は、氷雪に閉ざされた飢餓地獄を体験するが、やがて少年は力尽きて餓死。極限状況のなか、船長はついに少年の屍を解体して「食人」する。遭難から二カ月、一人生還した船長は、「奇跡の神兵」と歓呼されるが、事件が発覚すると、世界で初めて「食人」の罪で投獄された―。名作『ひかりごけ』の実在する主人公から、十五年の歳月をかけて著者が徹底取材した衝撃の真実、そして事件の背後に蠢く謎とは?太平洋戦争下で起きた食人事件の全容に迫る。 」

・ひかりごけ
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三國連太郎、笠智衆、奥田瑛二、田中邦衛という実にシブいキャストで映像化もされている。(これはまだ見ていないが)。

他に、流人の子孫たちの島で宿命の二人の男が出会う「流人島にて」、修業中の僧侶がとらわれた心の闇がテーマの「異形のもの」、街から漁村へ嫁いだ女がはじめて漁船に乗る話「海肌の匂い」の全4編が収録されている。どれも武田泰淳らしく突き詰めて考えさせる作風でズズンとくる。


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Posted by daiya at 2008年03月03日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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