2005年04月20日

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・結晶世界
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米国ラスベガスにきています。行きの飛行機で読んだ小説の書評。
面白かった。おかげで時差ぼけ。


アフリカの癩病院副院長であるサンダースは、一人の人妻を追ってマタール港に着いたが、そこからの道は何故か閉鎖されていた。翌日、港に奇妙な水死体があがる。死体の片腕は水晶のように結晶化していた。それは全世界が美しい結晶と化そうとする無気味な前兆だった。バラードを代表するオールタイムベスト作品。星雲賞受賞。

40年前に書かれた作品だが、SFとしての完成度はまったく色褪せていない。世界の結晶化というコンセプトは、宮崎アニメ「風の谷のナウシカ」の腐海に通じる神話的に美しいデカダンス。そこには生きると死ぬの間の究極のスローライフという、終末世界のあり方が提示される。ほとんど純文学のような味わい深さを感じる名作だと思う。

古い作品でハンセン病がモチーフとなっている。現地人の描写に植民地主義の名残りも感じられるなど、今読むと表面的には差別的ととられかねない微妙な表現もあるが、モチーフを深いレベルで、退廃的な究極美として昇華させることには成功しているように思える。

世界の終わりを描いた点が似ているので、年初に書評した「万物理論」が好きな人にもおすすめ。結晶世界の方が理屈が少なくて文学的。

・昨年度マイベストSF 大作は「万物理論」、中短編は「あなたの人生の物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002774.html


・J・G・バラードの千年王国ユーザーズガイド
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J・G・バラードは、既存のSFの概念にとらわれない前衛的、先鋭的な作風で、1960年代の「ニューウェーブ」運動の先駆者として知られる。本書は、1963年から95年にかけて発表された書評、エッセイなど90編あまりをまとめたもの。映画や現代アート、作家、科学といったテーマごとに分類されたそれらは、著者独自の味つけを施した映画論、作家論であり、ときには精神分析論、風景論、時空間論など多岐に及ぶ。20世紀文化を多角的な視点でとらえた刺激的な評論集でもある。


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Posted by daiya at 2005年04月20日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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