2007年03月16日

夢見の技法―超意識への飛翔このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・夢見の技法―超意識への飛翔
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著者のカルロス・カスタネダは、ニューエイジ運動のカリスマであり、この本はスピリチュアル系のオカルト本である。メキシコのインディアン呪術師に師事して、夢見の技法を修得するまでの著者の15年間の体験を綴っている。夢見の技法とは、夢を完全に意識でコントロールすることによって、高次元の世界と接触する古代呪術である。

呪術師の教えによれば、すべての人間は右肩甲骨の2フィート背後に光輝く「集合点」を持つ。その光は呪術師にしかみることができないが、集合点には宇宙エネルギーが集まり、その状態が人間の世界認識に影響を及ぼしている。これは光とレンズと写像の関係に似ていると思った。レンズとしての集合点が動けば光エネルギーの受け方が違った形になって、異なる世界認識の像を与えるのである。

普通の人間はみな同じ位置に集合点が固定されている。だから通常は固定観念を離れることができない。だが、夢を見ている間は第二の注意力と呼ばれる超常意識状態を得ることができ、集合点をずらすことができる。意識を覚醒させたまま夢を見ることで、集合点をずらしたまま保つことができるようになると呪術師は教える。

この本はオカルトであるが、これに似た明晰夢という現象が実際にある。世界のいくつかの部族は訓練を積むことで夢の内容を意識で制御し、見たい夢を見ているそうである。心理学や意識科学の研究者が検証したりもしていて、本当のことらしい。(夢の内容は自己申告だから研究者のいうこととはいえ、それが本当かどうかを証明することは難しそうだが)。

呪術師は変性意識を自由に操るうちに、高次元の世界を知る。すべてはエネルギーであり、形あるものは実在ではなく、物の見方によって移り変わる幻影にすぎないと悟る。そして彼らは夢見の中で、別の在り方をする世界と接触する。そこでは非有機的存在、偵察、死の使者などと呼ばれる高次元の存在が、夢見の探究者に干渉をしてくる。ときにその干渉は夢の中から現実にまで影響を及ぼす。著者は師の教えにより、夢見の技法を習得して危険な異次元とのコンタクトを何度か体験する。

スピリチュアルの指導書として読んだ場合、トンデモ荒唐無稽な内容なのだが、幻想小説として評価すると極めてオモシロい本である。ハヤカワSFの一冊であっても売れたのではないか。映画スターウォーズにたとえると、呪術師ドンファンは老師ヨーダであり、著者はルーク・スカイウォーカーであり、夢見の技法はフォースとその暗黒面の話である。そんな師弟の禅問答(禅の影響も感じられる)がこの本の内容である。そんな類似がベストセラーになた理由かもしれない。

夢に現実感を感じることは多いし、逆に夢を見ながらそれが夢だと意識する体験はよくあることだ。いいところで目が覚めてしまって続編を希望しながら二度寝すると、続きが見られることがあったりもする。誰しも体験する夢見の技法の入口はリアリティがある。その先に高次の存在との接触が本当にあるかどうかは知らないが、フィクションとしての面白さには、特筆すべきものがある奇書なのである、これは。

・ヒトはなぜ、夢を見るのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001062.html


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Posted by daiya at 2007年03月16日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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