2007年03月17日

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・木村伊兵衛の眼―スナップショットはこう撮れ!
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木村伊兵衛(1901〜1974)。20世紀の日本の写真史上、土門拳らと並んで最も有名な写真家の一人である。当時、1台で家が一軒建つといわれたほど高価なライカカメラを片手に、日本と世界の街角でスナップ写真の手法で時代を切り取った。

この本は、木村伊兵衛の代表作品と関係者によるエッセイで構成されている。

「下町育ちで古き良き江戸っ子の粋人ぶりを伝えるエピソードに事欠かない木村のストリートスナップは、「居合術」とも称された。出会い頭にすうっとカメラを構えてパチリ、深追いなしのワンショットである。この人が歩くと、まるで呼び寄せるかのように絶妙のシャッターチャンスが訪れたという伝説もあるほどだ。」

掲載されている代表作は見事である。ページをめくるたびに感嘆する。

有名な街頭スナップだけでなく、女性のポートレートも素晴らしい。

どうやったらこんな表情を撮れるのか?。女優や芸者や祭りの踊り子たちが白黒写真の中から闇の中の真珠のように浮き上がる。艶やかで光を放つ眼が凄い。敢えてぼかされたピント具合が女性の魅力をありえないほど引き出している。

写真家アラーキーのように被写体の女性にこまめに声をかけて雰囲気をつくる人ではなかったようだ。撮影現場にふらっと現れて「なんにもしなくていいです。そこに自然にしてくれればいいです」とだけ伝えて、私どうしたらいいのかしらと戸惑いがちな女性をパチリパチリと撮影したものだという。実はそれが女性の可愛らしさを引き出す極意の術だったのかもしれない。

「相手方から受ける感情を写して行くという内面的なつかみ方と雰囲気をつかんで行って、その中から対象を描き出すという、まわりから入っていく方法」と木村伊兵衛は自身の写真について語っている。

被写体になった人や関係者の証言によると、木村伊兵衛の撮影はあっけないほど短時間に終わってしまうものだったらしい。いつのまにかパチッと撮っているので、撮影されたのを気がつかない人もいたほどである。作為に染まらない自然を写すことを狙ったらしい

この本の面白さのひとつに木村伊兵衛の36枚撮りフィルムのコンタクト(ネガ一覧)が何枚も全部掲載されていること。最終的に作品として木村が選んだ、ひとつかふたつに○がつけられている。その前後に撮影したボツ写真が一緒に見られるのが勉強になる。本当に撮り直しをしない人であったようで、一期一会の居合い斬りに賭ける写真家だったことがわかる。

誰にでもできて奥が深いスナップショットの可能性について知りたい人におすすめである。

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http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004918.html


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Posted by daiya at 2007年03月17日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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