2007年08月08日

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・IQってホントは何なんだ? 知能をめぐる神話と真実
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「心理テストはウソでした。」の著者の最新作。

日本では知能について真正面から語ることがほとんどタブーになっている。この本の冒頭で紹介されているように、多くの人はIQという言葉は知っているが、何十年も前の古い知能検査法のイメージでとらえている。知能については漠然としか知らない。書籍もほとんどない。今の日本は、世界の知能研究の最新情報がほとんど入ってこない暗黒時代であると著者は嘆いている。

この本の前半では知能研究の歴史が語られている。

「1908年のビネ・シモン検査は、検査問題の難易度を年齢別にそろえるだけで、知能が1次元的に序列化できることを示したが、序列化を避けるために、精神年齢という言葉を使った。一方、スピアマンは知能が一般知能gと特殊知能sから構成されるという数学モデルを提案した。この一般知能を具体的に表現したのが知能指数という概念である。」

この一般知能gは、短期記憶や決断・反応速度、読み書き、視空間能力、数学的能力など何十項目もの個別の能力テストの値を因子分析することで確認される最上位因子である。最新の知能因子理論のCHC理論では、一般知能gの下に16の因子があり、さらにその下に多数の特殊な因子が配置されている。

多数の課題の成績を相関分析することで、課題ごとに特殊な因子と、ほとんどの課題に共通の因子をみつけることができる。一般知能gが具体的に何なのかは諸説があるわけだが、俗に言う「頭の良さ」は測定可能であるということになる。

一般知能gは測定可能である。それが世界の常識なのに、日本では、知能は複雑で測定はできないとする、多重知能理論が人気があるそうだ。これに対して著者は「マスコミや教育関係者には、知能が1次元的ではないという主張が心地よく響く。序列化の必要がなく、各自の個性が尊重できるからである。しかし、gは統計的に分離可能で、かなりの影響力がある。」と述べている。

知能を脳という臓器のはたらきだと考えれば、身体能力と同じように、能力を測れてもおかしくはないかもしれない。測れないことにしておいたほうが社会的には都合がよいということなのだろう。遺伝と知能の関係も近年、明らかになってきているそうだが、これも差別や偏見を助長するからか、おおっぴらには語られない。

英国での60年に及ぶ大規模なIQ追跡研究の結果は興味深い。IQは生涯にわたって安定していたのだが、驚くべきはIQが高かった人は長生きし、低かった人は早死にしている事実である。原因はわかっていないが、頭の良い人は健康的な環境や行動を選び、その結果、長生きするのではないかと言われているらしい。

あまり知られていない知能研究の実態を知ることができておもしろい本だ。

・「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003417.html



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Posted by daiya at 2007年08月08日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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